Saturday 29 December 2012

ランツフートの結婚式 (Landshuter Hochzeit)

ドイツの作家,ハンス・カロッサ(Hans Carossa)が,そのギムナジウム時代を過ごしたランツフート(Landshut)で4年に一度開催される催しですが,2013年が前回の開催から4年目に当たります.今回の開催期間は,6月28日から7月22日までのおよそ一ヶ月間.トルコの脅威に対するキリスト教国の同盟を強固にする目的で,中世の末期1475年に行われたという,当時のバイエルン公の子息とポーランド王女の結婚式が再現され,その他,馬上槍試合などの様々な出し物が披露されます.カロッサの『若き医師の日々』では,主人公(カロッサ)が旧友たちとこのイベントを見物に出かけるシーンが描かれています.

公式サイト(英語)はこちら

プログラムのダウンロードはこちらです.(ドイツ語のみ)

なお,催しの舞台であるランツフートはもちろん,近隣の観光地のホテルのほとんどは開催期間中,すでに予約で一杯のようです.(7月1日にランツフートを訪れたとき,Goldene Sonneという宿屋の前を通りかかりましたが,入口に"Suchen Sie ein Zimmer, helfen wir Ihnen dabei."などと書かれた札が掛かっていました.「部屋をお探しならお手伝いいたします.」と言った意味でしょうが,果たして空き部屋があるかなど詳細は不明です.)

以下,ランツフートを訪れた折に撮影したスナップです.

目抜き通りの両側には見物席が設けられていて,すべて指定席.イベントごとに観覧券を購入します.向かって左から二番目の建物は市庁舎.中に案内所があります.

ギムナジウムの卒業式の後,カロッサが仲間たちと塔に昇った聖マルティン教会.

ハンス・カロッサ記念ギムナジウム
炎天下のパフォーマンス,本当にお疲れ様です.

Bachfest 2013 in Leipzig

バッハの代表的なオラトリオ作品を結びつけている,神学的,演出手法的,作曲技法的関連に焦点をあてた構成の音楽祭.2013年6月14日から23日までの開催期間中,バッハはもちろん,それ以外の作曲者の作品を通じて,生誕,受難,昇天というキリストの生涯が再現されます.

公式サイトは,こちらです.

プログラム(独/英)のダウンロードはこちらから.

Wednesday 12 December 2012

ノルウェイ,エネルギー政策評価で世界第一位

スイスの日刊紙Neue Zürcher Zeitung電子版の記事Norwegens Strategie überzeugtによると,世界経済フォーラム(World Economic Forum)が公表した«Global Energy Architecture Performance Index Report 2013»のエネルギー政策のランキングにおいて,ノルウェイが105カ国中1位だったそうです.日本は25位,アメリカは55位でした.

このランキングは,評価対象となった国を,経済の成長および発展.環境への考慮,エネルギー安全保障など16項目で評価し,その結果に基づいたものです.例えば,経済成長の分野においては,物価,税,公的助成金,貿易収支などが評価対象とされています.

ノルウェイが第一位とされた理由は,複数の異なるエネルギーソースから安定した供給を得ていることに加えて,環境への影響が低く抑えられていることなどが挙げられています.

低いランキングに置かれているのは,環境保護という点で問題があるとされる新興国で,例えば,ブリックスに属する南アフリカ(59位),インド(62),中国(74)など.同じくブリックスに属するブラジル(21)やロシア(25)には,比較的高い順位が与えられています.

以下,一位から十位の国です.

  1. ノルウェイ
  2. スウェーデン
  3. フランス
  4. スイス
  5. ニュージーランド
  6. コロンビア
  7. ラトビア
  8. デンマーク
  9. スペイン
  10. イギリス

Tuesday 11 December 2012

リヨン,第14回「光の祭典」

フランス第二の都市リヨンで,毎年この時期に開催されるおなじみの行事のウェブアルバムが,LEXPRESS誌電子版に掲載されていました.

ル・モンド版は,こちらです.

ロッキーマウンテンの蒸気列車

12月8日付電子版シュピーゲル誌のWestern-Romantik auf Schienen: Volldampf durch die Rocky Mountainsより.

アメリカのコロラド州デュランゴ(Durango)から,昔ゴールドラッシュで沸いたシルバートン(Silverton)までの41マイルの狭軌の上を,のんびりゆったり走る蒸気列車があるそうです.

ウェブアルバムは,こちらから.標高3000 mに敷かれた線路を進む列車の姿は,圧巻です.

そして,運行する鉄道会社Durango Trainのサイトは,こちらです.また,往事の面影を伝えるデュランゴホテルのサイトは,こちらから.

850歳を迎えるノートルダム大聖堂の写真

12月10日付のシュピーゲル誌電子版の記事Jubiläum von Notre-Dame: Paris feiert die "Schöne von der Seine"に,こちらのオンラインアルバムが掲載されていました.

Friday 7 December 2012

人工衛星SUOMIが捉えた夜の地球

フランスの日刊紙ル・モンドの12月6日付ニュースレターの記事VOL DE NUIT – La NASA dévoile des clichés de la Terre illuminée dans la nuitに掲載された美しいビデオ映像です.


なお,記事の解説によると,大勢の人が住んでいる地域において,光が見えない箇所がありますが,そこには当然電気が通っていません.国際エネルギー機関によると,2011年現在,地球上には,およそ13億人もの人が電気無しで暮らしているそうですが,New York Timesのブログ,Dot Earthによると,その13億人とは,アフリカに暮らす人の60%,そして,アジアに暮らす人の20%だそうです.特に,印象深いのは,日本と同じショットに写っている朝鮮半島です.まばゆい光が溢れる南に比べ,北は暗闇の中に沈んでいます.ところで,記事のタイトルの"Vol de Nuit"ですが,サンテグジュペリファンならお気づきのとおり,彼の作品「夜間飛行」にかけているようです.

オスカー・ニーマイヤー氏の作品巡り

104歳で亡くなられた,ブラジルの世界的建築家オスカー・ニーマイヤー氏の作品のウェブアルバムが,12月7日付LEXPRESSの電子版に掲載されています.アルバムの閲覧は,こちらから.

Tuesday 4 December 2012

オリエント・シルクロード・エクスプレスの旅

etravel.ch*1)が募集中の,カザフスタンのタシケントや,ウズベキスタンのサマルカンドやブハラ,そしてトゥルクメスタンのアシュガバート他を豪華列車に乗って14日間(2013年3月28日-4月10日)で巡る旅.参加は,二名からで,最も安いカテゴリーの値段は,9230スイスフラン(二名分,およそ82万円).チューリヒから列車の出発地アルマティまでの往復の航空券とビザの取得料も含んだ値段です.主催は,ドイツの旅行会社で,旅行中に使用できる言語は,フランス語かドイツ語.(別に,英語でも,十分に対応してくれるとは思いますが.)参加するには,ビザの関係で,恐らく,最低限スイスに住んでいる必要があると思われます.仮に,日本に住んでいても参加できるとしたら,自分でビザを取得することになると思いますが,詳細は,etravel.chへお問い合わせください.


*1) 閲覧するには,etravel.ch,または,eboutic.chに会員登録してある必要があります.

気候変動対策における日本の順位 58カ国中47位

スイス放送(DRS)のニュースサイトの12月3日付記事Schweiz beim Klimaschutz vorneより.

ドイツの民間の環境保護団体German Watchは,毎年,各国の気候変動対策のパフォーマンスの順位を公表していますが,先日,その最新版が,ドーハでの国連気候変動会議の開催に合わせて公表されました.この順位は,気候変動に影響を及ぼす物質の排出量が多い58カ国を,それらの排出量と傾向,再生可能エネルギーの普及率,さらにエネルギー政策などの項目を検証し,それぞれの評価を指数(Climate Change Performance Index)に置き換え,その指数を降順に並べたものです.(英語版報告書へのリンクはこちらです.)

今回の報告書によると,1位から3位までは該当国無し.つまり,この団体によると,検証対象国のすべてにおいて,十分な気候変動対策が採られていないというのです.それでも,順位の高い国をみてみると,やはり,デンマーク(4位=最高位),スエーデン(5位),スイス(7位),ドイツ(8位)など,ヨーロッパの国が目立ちます.特に前者は,排出量が確実に減少し続けていることや,関連の法整備が進んでいるとのことで,German Watchから高い評価を得ています.

そして,日本の順位はというと,昨年の43位から4位下がって47位.因みに,今年の43位は,アメリカになっています.中国は54位,ロシアは56位,最下位の61位は,サウジ・アラビアです.なお,ヨーロッパの国の中では,オランダが49位と,やや意外な感があります.また,カナダも58位と最下位から数えて4番目に位置付けられています.

Monday 3 December 2012

カップルで暮らす男女の失業率が低い理由

先日ご紹介した11月28日付のブログポストLe couple, meilleur rempart contre le chômage ?が伝える,国立統計研究所(Insee)の仮説です.

まず,男性の場合,三つの理由が考えられると言っています.
  1. 高学歴の男性の方が,パートナーを見つけ易い.別の言い方をすると, 学歴の高い男性のほうが,女性に人気がある.そして,彼らの方が,比較的仕事も見つけ易い.
  2. パートナーと暮らしている男性の場合,子供を持っている確率が高い.そうなると,家族を養うためという,就職に対しての強い動機付けができる.
  3. 身体的になんらかのハンディを負っている男性は,そうでない男性に比べて,パートナー探しにおいても,就職においても不利.
ということだそうです.一方,女性については,パートナーと暮らす女性は,特に子供が居る場合は,専業主婦志向が高い.つまり,就労を希望していない.そのため,彼女たちは,自然と統計の母集団から排除されるため,全体の失業率は低く抑えられるのではなかろうかということだそうです.

Saturday 1 December 2012

脱経済成長型社会とは

Arte+7で11月24日に放送された"Yourope"において,ヨーロッパ各地における脱経済成長型のライフスタイルの実践を試みる人々の姿がリポートされていました.以下,番組から得た情報をまとめてみました.

まず,番組の紹介文から.

ドイツ,バーデン・ビュルテンベルグ州の新しい知事ビンフリード・クレッチマン氏は,いずれ,自動車の生産量が減少するだろうと語ったそうですが,それは,経済成長との決別を意味する言葉でした.私たちは,経済成長無しでも生きられし,また,環境や生活の質などにおいて,それによる好ましい影響もあるという考えがあります.こうした,"Post-growth economy"=《経済成長後の経済》と呼ばれる考えは(フランスでは," décroissance",イタリアでは,"decrescia",英国では,"degrowth*),ヨーロッパを始め,世界各地でその賛同者を増やしています.彼らは,無限の経済成長は,有限の資源とは相容れず,また,人間の尊厳もグローバリゼーションの犠牲になっており,経済の論理を地域主体に戻す,ディグロバリゼーション("deglobalization"=《脱グロバリゼーション》)が必要と主張しています.そうした考えを具体化する試みをレポートします.

次に,番組内容から,脱成長型の生き方を知るために役立ちそうなヒントをいくつか.

国際脱成長会議
第三回目が,今年の9月にイタリアのベニスで開催されました.公式サイトは,こちらです.

脱成長型のライフスタイルを提案したり,実践している団体や地方自治体
  • cambiamo.org:イタリアのパビアに本部を持つ.主な活動は,地元の農家の余剰生産物を,既存の流通システムを通さずに消費者へ提供.自転車による発電で電力を賄ってのコンサートの開催など.
  • Transition Town:英国の団体.日本にも,いくつか関連団体がある模様.
  • Totnes:英国.公立のリサイクルセンターの運営など,町が一丸となって脱成長を実践している.地元のKing Edward VI Collegeでは,環境教育が盛ん.
  • Bristol:英国.ブリストル・パウンドという地域通貨を発行.
  • Earth Heritage:英国.
  • Murks-nein-danke.de:ベルリン在住のStefan Schriddeさんが立ち上げたブログ.Schriddeさんは,修理して長い期間使い続ける事ができる製品を使うことを提唱.
  • Repair Café:オランダ.オランダに50箇所がオープン.ボランティアによる機器の修理が行われている.まもなく,英国に第1号店がオープン予定.
  • La Décroissance:フランス,リヨンで発行されている新聞.

コロラド州ロングモント市,住民投票で水圧破砕によるシェールガス採掘に"No"

フランスの新聞Le Mondeの11月29日付電子版の記事"Graine de révolte au pays du gaz de schiste"によると,アメリカ大統領選挙が行われた11月6日には,アメリカ各地で住民投票が行われましたが,コロラド州ロングモント市(Longmont,人口8万)では,水圧破砕によるシェールガス採掘の禁止が住民投票にかけられました.結果は,59%対41%で,禁止と決定.

水圧破砕は,現在,シェールガスを採掘することができる唯一の方法ですが,岩盤を破砕するために高圧で地中に注入される多量に水に混ぜられた化学物質が地下水脈を汚染し,また,空中に多量のメタンガスをまき散らすため,フランスなどではすでに禁止されています.

ロングモント市では,複数のガス会社が,50万ドルの費用をかけてキャンペーンを行い,住民たちに対し,雇用の創出などの効果を掲げ,シェールガス採掘の禁止を住民投票にかけないように説得に務めましたが,彼らの目論みは失敗に終りました.

この結果を受けて,ガス会社は,取得済みの採掘権が侵害されるとして,法的な手続きをとる構えを見せています.また,ジョン・ヒッケンルーパー(John Hickenlooper)コロラド州知事も,採掘を管理する権限を持つのは州であり,ロングモント市を訴えると言っています.なお,同知事は,2010年の州知事選挙の際,ガス会社から76441ドルの寄付を受け取っていることが知られています.

ロングモント市における今回の住民投票は,2011年から始まった,シェールガス採掘の反対派の市民たちの活動の結果でした. 発端は,市内の中学校と水浴客で賑わう湖のそばで採掘が計画されたため,水圧破砕によるシェールガス採掘の環境への影響についてコロラド大学で研究が行われ,その結果,採掘現場から半径0.5マイル(805メートル)以内の住民は,基準値の5倍もの有害物質にさらされることが判明したことでした.その結果が,公開されるやいなや,たちまち8200もの署名が集まり,住民投票にかけられることになったのです.ロングモント市の住民投票の結果を受け,今や,雨後のタケノコのように採掘施設が建設されつつある近隣の地方自治体でも同様の動きが起こり始めています.

ところで,シェールガス採掘に対する反対の動きは,ロングモントに始まった訳ではありません.すでに,反対のキャンペーンのための映像が制作されており,例えば,Josh Foxは,ドキュメンタリー映画"GASLAND"のなかで,ペンシルバニア州ディモックにおいて,ガスの採掘が開始された後,水道から出る水が炎に包まれる様子を紹介しています.

また,マット・デイモンが主人公を演じる映画"Promised Land"も水圧破砕法の問題を描いています.



環境保護団体のSierra Clubなどは,2020年には,エネルギーにおける輸入依存からの脱却を政策目標に掲げるオバマ政権に対し,水圧破砕の実施について,より厳格な制限を設けるよう促して行くと言っています.

Friday 30 November 2012

ユーロ圏諸国,統一通貨導入以来最高の失業率を記録

今や,世界の常識になっていますが,スイス放送のニュースサイトに最新の数字が掲載されていたので,メモしておきます.

記事のタイトルは,Rekordarbeitslosigkeit in der Eurozoneです.日付は,11月30日.テレビのニュースで取り上げられたトピックだったようです.

それによると,ユーロ圏17カ国における失業率は,11.7%.失業者数は,1870万人だそうです.

Eurostat(欧州連合の統計機関)によると,先月の失業率は,11.6%だったので,0.1%の増加です.スペインにおいては,26.2%.そして,ポルトガルにおいては,6人に1人が失業者です.

特に,若者の失業率が高いようで,先月10月の統計では,ユーロ圏における25歳以下の失業者数は,360万人で,23.9%.イタリアでは,36.5%.そして,債務問題の中心にあるギリシャとスペインに至っては,50%以上です.

専門家たちは,こうした状況はさらに悪化するだろうと言っています.

上記各国に比べて,ドイツは,5.4%.失業率が低い国のうちのひとつとして紹介されています.それより低い失業率を示しているのが,オーストリア(4.3%),リュクセンブルグ(5.1%),そして,死んでもユーロ圏なんかに入るものかと言っているスイスはどうかと言うと,先月10月末の数字は2.9%だったそうです.

欧州連合全体失業者数は,2590万人率に換算すると10.7%(先月は,10.6%)だそうです.

以上が,ニュースの内容ですが,以前,ご紹介した失敗指数(Failed States Index 2012)の番付でいうと,失業率が少ないというオーストリア,リュクセンブルグ,スイスは,それぞれ168番目,172番目,174番目で,皆Sustainableというクラスに入っています.ちなみにドイツは,その次のクラスVery Stableに入っています.(失敗指数が一番小さな国,唯一Very Sustainableというクラスに入っているフィンランドは177番目です.

ドイツ鉄道,来年からクリーン電力三倍増へ

ドイツのSPIEGEL誌の今日付ニュースレターに掲載された"Ökostrom: Bahnfahren soll grüner werden"という記事から.

ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)によると,来年の4月から,多くの旅客列車が,100%クリーン電力で,つまり,C02排出無しの発電で得られた電力で運行されるようになるとのことです.

対象となるのは長距離旅客列車で,近距離旅客列車や貨物列車は対象にはなっていません. これにより増加するコストについては,凡そ500万人いるというバーンカード*1)の所持者には負担は求められませんが,それ以外の乗客は,1ユーロ余計に支払い,環境プラス乗車券("Umwelt-Plus-Ticket")という乗車券を購入することで,ドイツ鉄道の環境保護の取り組みに協力することができます.

なお,このように,クリーン電力を増加させた結果の削減されるCO2の量ですが,1人の乗客を1 Km輸送した場合,現在は,42グラムですが,それが,14グラムに低下します.同じ条件で比較した場合,長距離バスでは30グラム,自動車では136グラム,飛行機では180グラムのCO2が,それぞれ排出されています.

ところで,ドイツ鉄道において,列車によって利用される電力の比率ですが,長距離旅客列車が22%,近距離旅客列車が45%,そして,貨物列車が33%となっています.そして,これらすべてにおいて,再生可能エネルギーが占める割合は,22%.ドイツ全体の電力消費量における再生可能エネルギーの割合は,25%とのことなので,それに比較すれば,まだ努力する余地があると言われているようです.

以上が,記事の内容ですが,さすがは,環境先進国ドイツだけのことはありますね.ところで,先日,ARTE+7で配信されていたドキュメンタリー映画『愛すべき天使たち』("7 oder warum ich auf der Welt bin") の中で,インタビューを受けたうちの一人,ベルリン在住のヨナタン君ですが,10歳という年齢にしては,びっくりするほど,しっかりとした人間観や世界観,そして,環境に対する考えをもっていて,ドイツの環境教育の成果なのか,それとも親御さんを含めた周囲の大人たちの影響なのか,それとも,その両方なのか,すくなくとも,ドイツと日本とでは,表面のみならず,相当奥深いところまで違っているのだなとつくづく思い知らされました.


*1) 一定の額を支払うと,支払われた額に応じた割引がなされる制度.スイス国鉄のHalb Tax Abonnementなどと似ている.

Thursday 29 November 2012

スペイン,核のゴミ行方不明

ドイツの電子版SPIEGEL誌の11月28日付の記事Spanisches AKW verschlampt Atommüllによると,スペインのAscó所在の原子力発電所から出された放射性廃棄物のうち,233ユニットの所在の記録が紛失し,どこに貯蔵されているか不明だそうです.当局は,すでに捜査を開始していますが,当該原子力発電所の所有者は,2007年にも,放射能で汚染されている蒸気を空気中に発散させた罪に問われ,1540万ユーロの罰金を払っています.

以上が記事の要約ですが,記事が掲載されているページに,今年の8月に公開された,世界の原子力発電の状況を表したグラフへのリンクが貼られていました.改めて見てみると,日本は,原子力による発電量では,米国,フランス,ロシアに続き,世界第三位なのですね.

グアンタナモ刑務所の閉鎖を提案するアメリカ上院情報委員会の報告書

電子版Le Monde紙の11月29日付の記事Un rapport officiel propose la fermeture de Guantanamoによると,上院情報委員会(Senate Committee on Intelligence)の委員長Dianne Fenstein氏は,その報告書の中で,米国本土に,グアンタナモ 刑務所の代わりとなる施設は存在していると述べたそうです.なお,この記事は,The New York Timesの11月25日付の社説Close Guantánamo Prisonを基に書かれたものです.

Wednesday 28 November 2012

カップルで暮らす男女の失業率は低い!?

Le MondeのBlogの11月28日付ポストLe couple, meilleur rempart contre le chômage ?より.

フランス統計研究所が11月28日に発表した統計によると,30歳から54歳の独身男性の失業率は,13%,同じく女性の失業率は,12%でした.しかし,カップルの男女の失業率は,男性では5%以下,女性では6%以下だったそうです. 統計研究所は,明確な理由は判明していないとしながらも,いくつかの仮説を提示しています.その紹介は,また,別の機会に.

リヨンで,第二回イスラム教・キリスト教宗教者会議開催

アルジェリアのフランス語版日刊紙El Watanの11月28日付記事"Les croyants font rempart face aux tentations extrémistes"によると,フランスのリヨンにおいて,第二回のイスラム教とキリスト教の宗教者会議が12月1日と2日の両日に開催されるそうです.

今回は,「政治において強まっている外国人排斥の傾向,また,宗教における原理主義の高まりへの対応」について,両宗教の宗教者の間で意見交換や議論がなされるとのことです.個人的に,結果が報道されるのを楽しみにしています.

Tuesday 27 November 2012

タイタニックが衝突した氷山の写真

LEXPRESS.fr Cultureの11月27日付の記事La photo de l'iceberg qui coula le Titanic vendue aux enchèresから.

記事の冒頭に掲載されているのは,タイタニック号が衝突した氷山の写真.事故の二日前,たまたま通りかかった別の船エトニアン号の船長によって撮影されたものだそうです.この写真は,来月,アメリカで競売にかけられるそうですが,8000から10000ドルの値段がつきそうとのこと.

そして,タイタニック号の遺留品の画像は,こちらから.

Monday 26 November 2012

イスラエル,防衛大臣辞任表明

11月26日付スイス放送(SF)のニュースサイトの記事"Israels Verteidigungsminister verlässt die Politik"より.

イスラエルの防衛相を務めるエフード・バラク氏(70歳)は,来年1月の選挙には立候補せず,政界を去るつもりでいることを記者団に伝えたそうです.今回のガザにおけるハマスとの戦闘終了後,世論調査では,バラク氏の人気は高かったそうですが...政界を去った後は,家族のために時間を使いたいそうです.

中国,地下礼拝を続ける数百万人のクリスチャン

11月25日付電子版SPIEGEL誌の記事"Gebete im Untergrund"より.

ティアンランさん(仮名,男性36歳)は, シューさん(仮名,女性31歳)と初めて会ったとき,何か特別なことが自分のうちに起きたように感じました.後に,彼は,そのとき神を見たと語っています.シューさんは,ティアンランさんの口から右の頬へと伸びる傷跡が印象に残りました.

二人は,ウェブ上のデーティングサイトで知り合い,その後,レストランで会ったとき,ティアンランさんは,ナイフによって顔が傷つけられた夜のことを語り,シューさんは,神について語ったといいます.

彼は,彼女が,他の女性より優しい心を持っているように感じました.彼女の印象は,自然で,彼女が生きている世界は,安らぎで満ちているように思えました.彼は,それまで,宗教と関係を持った事はほとんどありませんでしたが,シューさんと出会ったことで,クリスチャン達は,皆彼女のようなのだろうかと思うようになりました.

中国では,文化大革命以後,キリスト教は共産党により敵対視されるようになりました.そして,60年代の終頃から共産党は,キリスト教会を党のプロパガンダのための装置にしようとしました.そうした党の方針に従わなかった教職者たちは,追放され,中には強制労働を科せられた人もいました.一方,クリスチャン達は,隠れて信仰を守りました.

現在,中国では,多くの人がキリスト教会の信者になっています.1949年,毛沢東により,中華人民共和国の誕生が宣言された時点で,中国のクリスチャンの数は,およそ100万人程度だったと言われますが,今日,その数は,非公式ながら1億を超えていると考えられています.

なぜ,クリスチャンになる人が増えているのか,その理由として,多くの人は,社会にはびこる,人同士の互いに対する無関心を挙げています.急速に変化し続ける社会は,人々に疎外感をつのらせ,その結果,生まれた空虚感を満たす手段を共産党は持ち合わせていないというのです.共産党の政策は,このような社会の変化に付いて行けていないのです.

ティアンランさんは,高給を得ているインテリア・デザイナーです.彼は,身長も高く,魅力的で,結婚相手を見つけるのも容易いことだろうと思われますが,生涯を共にする相手と出会うことはありませんでした.彼が,これまでに出会った女性は,皆,品物の値段はよく知っていたが,本当に大切なものの価値が分かる女性はいなかったと言います.

彼によると,こうしたことは,女性に限ったことではなく,国全体がそうなっているそうです.彼は,多くの利益を得るために,ミルクに,人体に有害な化学物質を混ぜた企業のことを知ったとき,衝撃を受けました. そして,繰り返し報道される共産党トップたちの汚職にうんざりもし,政府の福祉制度改革への取り組みも遅いと感じています.

シューさんと出会う数週間前,彼は,広州において発生した事故についての報道を目にしました.その事故とは,少女が車にひき逃げされたというものでした.重傷を負って,路上に横たわる少女を助けに来る人はおらず,彼女は,再びトラックに轢かれ,そのあとで,ようやく一人の女性が彼女を病院まで運んでくれたというのです.このニュースを見ていた彼は,テレビのスイッチを切りました.その二日後,彼は,少女が亡くなった事を新聞の記事を通じて知りました.

こうした出来事は,今日の中国では枚挙にいとまがありません.社会のモラルの低下は,政府によって,最優先に対策が講じられるべき問題だと,雑誌"Study Times"は,その記事の中で主張しましたが,インターネット上で検閲された結果,取り下げが命じられました.

シューさんは,18歳になる直前,ある教師から共産党に入るように勧められました.こうした勧誘は,クラスで最も優秀な生徒にのみなされるもので,党は,各世代においてもっとも優秀な人材を党員に加える方針でした.彼女は,名誉あることと思い,承諾しました.その後,彼女は,党の教育機関で,他の選ばれた学生たちと一緒に,「党は,公平,統一,そして異民族間の相互扶助を支持する」といった,共産党の憲法のフレーズを教えられました.しかし,彼女は,違和感を感ぜざるを得ませんでした.公平,兄弟愛といったものは,そのクラスには存在していないと思いました.やがて,党は,彼女の行動についても細かく指示を与えるようになりました.

それから,13年程過ぎた今, シューさんは,「共産主義者は,人間は生まれながらにして善人であり,働いて人生の目標に到達することで幸福を得る事ができると言っています.しかし,それは誤っています.人は,決して満足する事はなく,迷い続けるのです.共産主義の教えは,誤った人間理解に基づいています.」と言います.

高層ビルの9階にある,広い事務所.その壁の一つには十字架が掛けられていて,本棚には,天使の置物が置かれています.移動式の壁によって隔てられている,以前の社長室だったところは,子供たちが聖書について学ぶ場所です.毎日曜日,この仮の教会には,ティアンランさんとシューさんを含め,80名ほどの教会員が集まってきます.彼らは,ここで,新しい人間として生まれ変わったといいます.

シューさんと知り合って以来,ティアンランさんは,毎日曜日,教会に通いました.彼は,牧師の説教を聴き,また,教会員たちがお互いに温かく接しているのを見ました.そんなある日,彼は,ひとつのことに気がつきました.それは,仕事の仲間には,いつも高価な贈り物をしているのに,自分の家族には何も贈ったことはないということでした.大切な人たちをなえがしろにしている自分も,結局は,自分が批判していた冷たい社会の一員だったということに気がついたのです.

シューさんは,教会に通い始めたころ,七つの罪についての説教を聴きました.彼女は,ぞれまでの自分の人生を振り返りました.「人は,生まれながらにして罪深いものであり,神によって救われる必要があるのです.」という牧師の言葉を聴いて,家に走って戻って泣いたそうです.そして,彼女は祈りました.

それからほどなくして,ティアンランさんは,洗礼を受けました.シューさんは,共産党への寄付を止めました.そして,数ヶ月後,二人は,結婚したのです.

[中略]

このように,中国では,ほとんどのクリスチャン達は,隠れて礼拝を行っています.北京だけでも,3000もの地下教会が存在するといわれています.国家によって認可された教会もあるのですが,統制が厳しいので,集うクリスチャンは極めて少数です.例えば,カトリック教会などでは,ローマ法王の権威が認められておらず,教会の最高権威は,共産党に帰属するとされます.

憲法上,宗教の自由は保障されてはいるものの,実際は,それにはほど遠い状況です.一年半以上にわたり,宗教の自由を要求し続けているシォウワン教会(Shouwang Church*1))は,北京の広場で礼拝を行おうとしますが,毎回,当局に制止され,参加者は一晩拘束されますが,彼らは,留置場で礼拝をしているそうです.

このような状況に置かれているクリスチャン達は, 彼らの信仰が認められていないこと,安全も保障されず,仮の会堂で礼拝をせざるを得ないことに対して不満を持っています.

少し前に,シューさん達の通う教会を一人の警官が訪ねて来て,いろいろと質問をして帰って行きました.そのとき,彼女は,自分たちが築いた教会が,近いうちに閉鎖を余儀なくされるかもしれないと感じたそうです.しかし,彼女は,恐れません.「もし,私たちが逮捕されることがあったら,それは,神様が望まれたことです.そして,神様は,解決策も与えてくださいます.」と彼女は言います.

ティアンランさんは,シューさんのお腹を撫でました.来年の春,二人に息子が生まれるそうです.彼らは,自分たちの子供が,自由に信仰を持つことができる中国の実現を待ち望んでいます.


*1) 守堂と書くようです.ウェブサイトもあります.

Sunday 25 November 2012

フランス,路面電車導入ブームにかげり

11月23日付M le magazine du Mondeの記事Le tram en bout de courseによると,2012年の年末は,フランス各地で路面電車の路線開業が目白押しだったそうです.具体的には,11月17日にはリヨン,12月8日にはディジョンにおいてそれぞれ開通し,同月12日にはル・アーブルの路面電車の路線網が延長されました.また,イル・ド・フランスでは,セーヌ・サン・ドゥニで,既存のT1線が,11月15日からオ・ドゥ・セーヌ県のアスニェールまで延長され,オ・ドゥ・セーヌ県内を走るT2線が,同月19日からヴァル・ドワーズ県のブゾンまで延長されました.そして,パリのT3線が,12月15日から,それまでのラ・ポルト・ディブリからラ・ ポルト・ドゥ・シャペルまで延長されることになっています.

政府系機関であるCetu(Centre d'études sur les réseaux, les transports et l'urbanisme)によると,2000年以降,路面電車を導入した都市の数は2倍,営業キロ数は3倍,そして,乗客数は4倍になったといいます.しかし,導入の費用が高額の路面電車の導入には,予算の面からそろそろブレーキがかかりはじめています.因みに,路面電車の路線整備には,1キロあたり,2500から3000万ユーロかかりますが,これは,パリのメトロの建設費用に比べれば1/5ですが,バスの路線に比べると3倍のコストです.フランスの会計検査院(la Cour des comptes)は,この点について,関係自治体に対し注意を促し続けています.例えば,2010年には,パリのT3線のコストが過小に見積もられていた点を指摘し,さらに,2012年には,パ・ドゥ・カレ県のリエヴァンとエナン・ボモンを結ぶ路線について,その建設の妥当性に疑義を表明しています.しかし,地方議会の議員の多くは,選挙を2年以内に控えて,得票率のアップにもつながる路面電車の導入に意欲を示し続けていることも事実です.

Certuのヴァルネゾン・ルヴォル氏は,地方自治体の中には,高コストの路面電車より専用レーンを走るバスの導入を優先せざるを得ないところが出てきたといいます,例えば,ストラスブールでは,国鉄の線路に乗り入れて空港迄行くの出来る路線が計画されていましたが,現在,その計画は中断しています.というのは,同路線の建設にはトンネルを掘る必要があるので,その費用が高くつくからです.メッツ,シャンベリ,ベルフォールでは,導入計画自体が撤回されました.代わりに,メッツでは,専用レーンを走行するバスの導入が計画されていて,2013年には開業予定です.また,ベルフォールでは,交通機関の組合の代表クリスチャン・プルースト氏は,路面電車の導入に反対の立場をとっており,同氏によると,路面電車を導入するより,バス路線,自転車,また,カーシェアリングを充実させるべきであり,そのほうが,より経済的であり効率的なのだそうです.

2年前のヨーロッパの高速鉄道車両写真集

Hochgeschwindigkeitszüge: Höchste Eisenbahn

電子版シュピーゲル誌上に2010年7月に掲載されたウェブ写真集です.紹介されている車両は,以下のとおり.

  1. Bombardier社のZefiro:最高速度380 km/h.
  2. Alstom社のAGV: 最高速度360 km/h.
  3. Thalys:最高速度300 km/h.
  4. Siemens社のICE-T
  5. Alstom社のAGV
  6. TGV,ICE 3 MF
  7. ICE 3,Thalys
  8. ICE 3
  9. ICE 1
  10. ICE 3?
  11. ICE 3

グラウビュンデンと南チロルを結ぶStairways to Heaven

アルプスに散在する中世の城や教会を巡る観光ルート,スイスの東端グラウビュンデン州と南チロルを結ぶStairways to Heavenのサイトは,こちらです.

Saturday 24 November 2012

アムステルダム,水中出産のメッカ


フランスなどでは,医師の間では賛否が分かれている水中出産ですが,2011年,オランダのアムステルダムで開院したGeboortecentrumは,この方法による出産で有名な産院.ここで生まれる赤ちゃんの8割は,水の中で生まれるとのこと.世界中から大勢の妊婦さんがやって来るそうです.写真を見ると,高級ホテルを思わせる内部です.(記事の中のウェブアルバム参照.)

ブルキナ・ファソ,国際刑事警察機構による少年奴隷の救出


11月24日付スイス放送(SF)のニュースサイトに掲載されたInterpol befreit Hunderte Kindersklavenより.(英語字幕)

西アフリカのブルキナ・ファソにおいて,鉱山および綿花のプランテーションで働かされていた400人もの少年奴隷が,今年の10月末に国際刑事警察機構により救出されていたことが,同機構によって発表されました.

同時に73名の関係者が,人身売買の容疑で逮捕されました.発見された子供達は,地上下最深70 mの地中で金鉱脈の坑道を整備するために,報酬無しで強制的に働かされていました.現在,ブルキナ・ファソの当局が,救出された子供たちの両親を探していますが,彼らのうち数名は,ニジェール出身でした.

救出された子供達のうち,最年少は7歳でした.また,女の子たちは,性的虐待の被害を受けていました.

CO2に沈むニューヨーク

 
New Scientistドイツ語版のサイトに掲載されたシュミレーションビデオ.青い球一つが,1トンのCO2を表しています.

昔,教会,今は…


11月23日付M le magazine du Mondeに掲載されたウェブ写真集.イタリア各地の,図書館や劇場へと《リサイクル》された元教会の様子です.

Friday 23 November 2012

アフリカよ!いざ,ノルウェイの凍死者を救わん!


Le Monde紙のBlogに掲載された11月23日付ポストL’Afrique se mobilise pour secourir les norvégiens qui meurent de froidで紹介されていたビデオクリップです.パロディなので,事実ではありません.が,なかなか良く出来ていて,楽しい作品です.

内容は,凍死者が出ている厳冬のノルウェイに暖房機を送って,彼らを救おうという呼びかけです.映像に写っているコーラスは,1984年に飢餓に教われたエチオピア支援のために結成されたグループBand AidをもじったRadi-aid(Radiator+aid). 企画したのは,ノルウェイの学生たちとNorwegian Students' and Academics' International Assistance Fund.何を訴えているかというと,今日,アフリカの特定の国など,貧困やその他の問題を抱える国に対する支援を呼びかけるときに用いられているイメージが,あまりにも固定化し過ぎていて,必ずしも事実に則したものではないので,そうした姿勢を見直そうというのです.彼らの考えは,以下の4つのポイントにまとめられています.

  1.  寄付を募るのに,必ずしもステレオタイプのイメージは必要ではない.往々にして用いられているのが,悲しい情景だが,場合によっては事実から離れているものもある.
  2. 学校,テレビおよびその他のマスメディアにおいて,より質の高い情報が提供されるべきである.何故,危機,貧困,飢餓,エイズといった問題のみに焦点が絞られるのだろうか.何故,うまく行っていることも,伝えようとしないのだろう,あるいは,先進国が,アフリカに依存している面もあることを伝えようとしないのだろう.
  3. メディアは,取材の対象となる国々を尊重し,倫理を持って取材すべき.例えば,メディアは,栄養失調の赤ん坊の映像を,その子が欧米人の場合,その両親の許可を得る事無しに公開するだろうか.
  4. 支援は,本当の必要に応えるべき.情緒的な動機による一時的な支援ではなく,投資や協力と平行して実施されるべき.
ノルウェイには,粋なことを考える人が居るものだと思いました.しかし,紹介されているビデオを観て,さらにその説明を読んでみると,なるほどとも思いました.自分の経験から言わせて頂ければ,例えば,アルジェリアの人たちとおつきあいした事がありますが,彼らは,確かに目に見える部分では貧しいかもしれないが,目に見えないところでは,私たち日本人等よりはるかに豊かでるように思わされたものです.時には,うらやましくも思ったものです.

Thursday 22 November 2012

いじめ - Mobbing - Harassement

少し古い記事ですが,日本では,一般に「いじめ」という言葉で呼ばれる行為に関するもので気になったものがありました.以下の4つです.日付の古い順に並べてあります.

  1. SHAME – Une vieille dame insultée suscite un mouvement de solidarité (2012年6月22日付Le Monde紙のBlog,フランス)
  2. HARCÈLEMENT – Le Canada bouleversé par le suicide d’une adolescente (2012年10月16日付Le Monde紙のBlog)
  3. Mobbing im Internet: Bis zum Suizidversuch gequält (2012年10月23日付Aargauer Zeitung,スイス)
  4. A Brest, un adolescent se suicide après avoir été victime de chantage sur Internet (2012年10月29日付Le Monde紙)
こられの記事に共通しているのは,いずれの事件においてもインターネットが登場しているということです.1.の記事では,Youtubeが,残りの3つでは,Facebookが,当該の行為の道具として用いられています.

各記事において紹介された被害者は,1.では,8人のお孫さんを持つアメリカ人女性,2.と3.では,15歳のカナダ人女性で同一人物,そして,4.では,18歳のフランス人男性です.そして,2..3.,4.のケースでは,被害者の2人は自殺しています.

加害者は,1.では,12歳から14歳の4人の少年,2.と3.では,アノニマスというクラッカー集団のメンバーと自称する人物が特定したとのことで,それによると32歳の男性,そして,4.では,不明です.

それぞれの事件を簡単にご紹介すると,1.は,ニューヨークのバスの車内で,被害者の女性を4人の少年がののしり,その行為を動画に撮影し,それをYoutubeに投稿したというもの.2.,3.,4.は,それぞれ,たまたまFacebookを通じて,異性と思われる人物と知り合い,相手に求めに応じて,体の一部を露出して撮影した画像を送ったところ,2.,3.のケースでは,それが公開され,4.では,金が要求され,応じない場合は,画像を公開すると脅迫を受けたというものです.なお,2.と3.においては,それに加えて,彼女が好きになった男性の恋人とその友人たちからFacebookを通じた誹謗中傷を受けています.

これらの記事を読んで,興味深く思えた事が二つあります.一つは,問題となっている行為の呼び方です.3.のAargauer Zeitungの記事の中で説明されていますが,SNSなどのツールを使ったインターネット上の誹謗中傷の行為は,一般にCyber- Mobbing*1)と呼ばれています.そして,2.のLe Mondeのブログでは,被害者の15歳の女性が受けた行為は,harassement*2),また,4.のケースは,blackmail*3),すなわ ち脅迫という呼び方がされています.

ところで,冒頭に,日本で「いじめ」と呼ばれる行為に関する記事と書きましたが,「いじめ」を,学校という限られた場所で子供たちの間で発生する事象,または,学校以外の場所に於いて,同じ学校に通う子供同士,場合によっては,彼らと交友関係のある同年代の子供も巻き込んで発生する事象と定義するのであれば,上記の記事で取り上げられている事件は,4つとも該当しません.いずれの場合も,加害者と被害者のどちらかのみが未成年者であるためです.(4.の被害者であるフランス人男性は,18歳であり,成人ですが,事件当時高校生でした.)しかし,仮に,1.において,被害者を加害者の少年たちの同級生,2.,3.,4.のケースでは,加害者を被害者の同級生と置き換えた場合,類似の事件は,学校,あるいは,それ以外の場所でも同級生の間などで起こりえないとは言えません.そして,その場合は,日本では,それらはすべて「いじめ」という言葉でくくられてしまうでしょう.少なくとも,英独仏の各言語においては,このような区別は行われていません.例えば,ドイツ語圏でも英語圏でも,学校における集団暴行も,若者による路上生活者に対する集団暴行も,ニュースメディアはMobbingという言葉で伝えています.

日本において,上述したような条件を満たす場合,すべて「いじめ」という言葉で表現されるのは,その問題に議論の焦点を絞るため,あるいは,加害者の保護者の方を慮っての事かも知れません.そうした理由も,もちろん理解できない事はないのですが,そうした場合の弊害もあるのではないでしょうか.つまり,問題を限定化,局所化するのと同時に,私たちは,そこだけにのみ適用可能の倫理に基づいて議論を進める事はないでしょうか.いじめを受けたことを理由に自殺が起きた場合,条件反射のように「命を大切に」というスローガンが厄払いの呪文のようにあちこちで叫ばれます.しかし,この国の社会全体を眺めた場合,この言葉によって意図されていると思われる原則の適用範囲が,「いじめ」という言葉の範疇に含まれる事象と同様,学校および学校で関係を持った子供たちだけに限られてしまいがちのように感じられるのです.こうした姿勢においては,普遍的な個人とその存在の尊重といった概念が薄められてしまっているような気がしてなりません.年齢性別,そして社会的地位に拘らず,身体的,あるいは精神的に健全な生活が送れない状況に置かれた場合,当該の学校,家庭,職場などにおいて,局所的,対症療法的な対応ももちろん必要ですが,同時に,それらの現場を含んだ社会全体に適用できる共通の原則を見い出しておくことも重要ではないか,少し大げさに言えば,社会を維持する上で必要となる,最低限の共通の人間観,生命観,倫理観といったものを改めて確認してみるべきではないかと思うのです.

もうひとつ興味を覚えたのは,これらの事件が発生した後の社会の反応です.1.のケースでは,投稿された動画は,数日後,390万ものアクセスがありました.そして,それを観て憤慨した一人のカナダ人が,気の毒な女性のバケーションの費用として4000ドル贈ることを提案し,寄付を呼びかけたところ,それに応じた多くの人たちにより,瞬く間に458000ドルもの寄付が集まったといいます.そのほかにも,多くの励ましや慰めの手紙や電子メールが彼女のもとに届いたそうです.そして,2.と3.と4のケースですが,こちらは,被害を受けた方は,本当に残念な事に2人とも自殺をしてしまいました.しかし,カナダ人女性の場合は,彼女が死を選ぶ前にビデオにメッセージを残し,それを動画投稿サイトに投稿したこともその理由と思われますが,その死を悲しむ多くの人々が,それぞれの気持ちを表しました.彼女の死後,彼女のためにFacebookのページがいくつも開設され,そのうちのひとつは,50万人の人の書き込みがあったそうです.そして,彼女に哀悼の意を示すため,数千の人がピンク色の服に身を包み,街頭に集いました.そして,カナダ各地で,彼女のために,ローソクが灯されたそうです.4.については,亡くなられた男性に対し社会から同様の反応があったかは,記事は伝えていません.


*1) ドイツ語でも,英語と同様,このように言います.
*2) 原文のフランス語では,harcèlement.
*3) 原文のフランス語では,chantage.

Wednesday 21 November 2012

ハマスとファタの資金源

スイス放送(SF)のニュースページに掲載された11月20日付記事«UNO-Gelder für Waffen? Die bekommt die Hamas geschenkt»から.

現在,戦闘が行われているガザほど,世界から資金が集まる地域はないとこの記事は言っています.そして,«CIA – World Factbook»によると,ガザには,国連,米国,欧州連合から年間およそ20兆ドルの資金が送金されており,その半分をヨルダン川西岸を支配するファタ,そして残りの半分をハマスが受け取っているそうです.

また,ハマスは,上記の金額に加えて年間300万ドルほどイランから受け取っていましたが,これは,ハマスが,シリアのイランと良好な関係にあるシリアのバシャル・アル-アサド政権に対抗する姿勢を採るようになってから中断しています.そして,今はトルコによって同額の資金がハマスに提供されています.この結果,2012年のハマスの予算は,前年に比較して25%増加しました.

それでは,今回の戦闘において,最初の7日間にガザからイスラエルに向けて発射された1000発を超えるミサイルの購入資金は,一体誰が提供したのでしょうか.スイス放送(DRS)の安全保障の専門家Fredy Gsteigerによると,基本的に上記の資金は武器の購入には使えず,ハマスは,これらの武器を,スーダンやカタール,また,反ユダヤ主義者やイスラム原理主義者のスポンサーなどから無償で受け取っているといいます.また,これらの国や個人から武器が受け取れなくなった場合でも,イランやシリアが供給を続けます.関係が悪化したといっても,共通の敵はイスラエルであり続けるわけですから.

さらに,エジプトの政権を手にしたイスラム同胞団も,政権に就いたときからガザへの武器の輸出ルートを開放したことで,結果的に,ハマスは武器の供給を受ける機会は増えているのです.アラブの春の皮肉な結果といえましょうか.

"Time Magazine"*1)は,ハマスへの武器の流入ルートについて報じていますが,それによると,例えば,イランから運ばれるミサイルの場合,それらは,経由地のスーダンで中国や北朝鮮製の武器が加えられ,エジプトのシナイを通ってガザとの国境まで運ばれるとのことです.

また,スイスの"Basler Zeitung"紙の11月20日付の記事"Gaza-Offensive wurde jahrelang vorbereitet"によると,4年前の戦闘の終結以降,ハマスは,その軍備の近代化と充実を用意周到に進め,今回の攻撃の開始に際しては,イスラエル国民の半数の居住地域をそのミサイルの射程範囲に納めていたそうです.


*1) SFの記事には,"Time Magazine"とありますが,"The New York Times"の記事同様の内容を伝えています.

Tuesday 20 November 2012

ラトビア観光情報

バルト海に面したスリトレ国立公園など,魅力的な景勝地を紹介するラトビア政府観光局公式サイトの日本語版はこちらです.

Monday 19 November 2012

パレスティナ人医師の著書『私は,憎まない』

激化の一途を辿るイスラエルとハマスとの戦闘は,多くの民間人犠牲者を出し続けています.攻撃の対象となっているガザ地区は,2008年から2009年にかけてもイスラエルの攻撃にさらされ,多くの民間人が犠牲となりました.当時,イスラエルの病院の勤務医だったパレスティナ人医師Izzeldin Abuelaishさんも,1月16日,自宅がイスラエルのミサイルによって直撃され,三人の娘さんと一人の姪御さんを失いました.当時,ジャーナリストが取材のためにガザ地区に入るのは,イスラエル政府によって禁止されており,Channel 10の記者Shlomi Eldarさんは,友人のAbuelaishさんに電話をかけ,ガザ地区の状況を伝えてもらっていましたが,Abuelaishさんの自宅にイスラエルのミサイルが着弾した直後,Abuelaishさんのほうから,当時,生番組に出演中のEldarさんに電話がかかってきました.その時の状況を伝えているのが,このビデオです.(当該の番組は,イスラエルのテレビ局で放送されたものですが,その一部がアルジェジーラの番組内で放送され,それが録画されたようです.画面に写っているのは,命を取り留め,イスラエルの病院に収容されるAbuelaishさんの娘さん.連絡を受けたEldarさんの努力で,パレスティナの救急車からイスラエルの救急車へのリレー搬送が実現したと番組は伝えています.)



そのAbuelaishさんが,"Je ne hairai point" (英語版タイトル"I shall not hate")という本を出しました.自身の著書の中で,Abuelaishさんは,住民170万人のうち80%が貧困に喘いでいるというガザの現状を伝えています.その序文を執筆した,Abuelaishさんの同僚のイスラエル人医師Marek Glezermanさんは,その中で,「Abuelaishさんは,これまで多くのつらく悲しいできごとを経験したが,彼は,パレスティナ人とイスラエル人が平和に共存し得ることを固く信じて疑わない」と書いています.Abuelaishさんは,また,中東における女子教育の促進のために,Daughter for Lifeという基金を設立しています.

以上,11月14日付電子版L'EXPRESS誌"Palestine: un médecin de Gaza épris de paix malgré la douleur"より.

今回の,イスラエルによるガザの攻撃は,イランへの攻撃を目論む前者による予行演習のようなものであるといった見方もあるようですが,この先,もし,パレスティナ難民がエジプトに大量に押し寄せる事にでもなったら,ただですら不安定なシナイ半島は,パレスティナからのイスラム原理主義者たちの流入により一層不安定化しかねません.そして,最悪のシナリオとして,もしイスラエルが,シナイ半島にまで攻撃の手を伸ばすようなことになったら,再び,石油ショックのような状況が起きないとも限りません.いずれにせよ,もうこれ以上の犠牲者を出さないように,一日も早く,両者による停戦が実現をすることを願っています..

なお,ドイツ語で恐縮ですが,ドイツ紙"Focus"が提供するイスラエルとハマスとの戦闘の様子と関連情報を伝えるLivetickerはこちらです.

また,こちらもドイツ語ですが,スイス放送が提供するパレスティナの地図はこちらです.

Sunday 18 November 2012

ドイツのクリスマス風景

http://goo.gl/UCLbJ

"SPIEGEL"誌の記事"Weihnachtsmärkte: In Süddeutschland ist es am gemütlichsten"に掲載されたウェブアルバムマインツ,ハイデルベルグ,ベルリン,ミュンヒェン,ハンブルグのクリスマスの様子

コペンハーゲン市,タブレットPC付き公共レンタルサイクル導入へ

11月17日付電子版"SPIEGEL"誌の記事"Kopenhagen schraubt Navi an Lenker"より.

来年から,デンマークの首都,コペンハーゲンを自転車で巡るのがさらに楽しくなりそうです.コペンハーゲンと言えば,アメリカやヨーロッパの都市における公共レンタルサイクルの草分け*1)ですが,そこで貸し出される自転車に,来年からタブレット形コンピュータが搭載されるというのです.端末には,ナビゲーション機能が装備され,借りる際に,利用者(観光客)の希望に応じて,三つの異なるルートが提案されます.そして,訪れた地区の名所に関する情報はもちろん,ショッピングのディスカウント情報,レストランのスペシャルメニューなど,あらゆる便利な情報が,まさにリアルタイムで表示されます.

この,デンマーク,スペイン,そしてオランダの企業によって共同開発された新しいシステムは,20 クローネをデポジットとして払えば,誰でも利用することができます.自転車もなかなかシックなデザインとのこと.

以上が,記事の要約ですが,自転車でヨーロッパを巡る場合に役立つのが,"The European Cycle Route Network"のサイトです.昨年,北ドイツのフーズムを訪れた際,St. Peter-Ordingの自転車屋さんで借りた自転車に乗って,このサイトでも紹介されている"North Sea Cycle Route"のごく一部の区間ですが,Westerheverの灯台まで往復しました.天候にも恵まれ,北海沿岸のサイクリングはなかなか楽しい経験でした.次回,もし機会があったら,ドナウ川沿いのサイクルロードを走ってみたいなどと思っております.

大勢の観光客で賑わうWesterheverの灯台

*1) 1995年,世界に先駆けて公共レンタルサイクル制度を導入

Saturday 17 November 2012

パリ,窓のある風景

De la fenêtre des parisens...

ニューヨークの写真家Gail Albert Halabanが捉えたパリの風景.ちょっぴり,Jacques Tatiの"Trafic"(1971)の一場面を思い出しました.

Belleville界隈

これといった名所も旧跡もないのに,なぜか近年,人々を惹きつけているパリ19区のBelleville界隈.訪れる人と住民との交流を手助けするグループParis Par Rues MéconnuesのAngénic Agneroさんが,芸術家のアトリエや独特の風情も持つ路地裏に案内してくれます.


(11月16日付電子版"Le Monde"より)

Friday 16 November 2012

ユーロ危機 - 多くの優秀な人材がドイツへ

11月15日付"電子版SPIEGEL"誌記事"Südeuropas Leid, Deutschlands Freud"より.

ユーロ危機の思わぬ,というか当然の結果というか,ユーロ域内で多くの債務を抱えるスペイン,ポルトガルなどからドイツへ移住する人が増えているそうです.

ドイツへの移住者数は,2012年上半期だけで,182,000人を記録しました.これは,前年同期に比較して35%の増加です.なかでも,ポルトガルとスペインからの移住者の数は,2011年に比較した場合,50%以上の増加となっています.さらに,ギリシャからの移住者にいたっては,その増加率は実に78%.そして,これらの移住者のうち,50から70%が高等教育を修了した人々といいます.そして,ドイツにとって,都合の良いことには,これらの高い知識を備えた人々の専門分野が,国内の労働市場において必要とされている自然科学や技術系なのです.こうした状況は,ドイツの労働市場に非常に大きな恩恵を及ぼすものと期待されています.

以上が,記事の要約ですが,そもそも,ドイツは,ギリシャを始め,今,債務問題で苦しんでいる国々(もちろん,自業自得と言える面もありましょうが)に自国の製品を輸出する事で稼いで来たはずです.そのために,これらの国において債務が増えたということも事実です.その上,さらにこれらの国からの頭脳流出が続き,近い将来,頭脳の空洞化とでも呼ぶべき状況が起こった場合,それは,移住元の国の経済とヨーロッパ経済全体に,どのような影響を及ぼすのでしょうか.

関連記事"Deutschland kann sich dem negativen Sog nicht entziehen"(11月15日付"電子版SPIEGEL"誌)

ユーロ危機に関する最新の資料はこちら. (ドイツ語)

効果が確認できないインフルエンザ薬タミフル

11月15日付電子版"SPIEGEL"誌の記事"Forscher rufen zum weltweiten Roche-Boykott auf"より.

世界で最も多く購入されている,インフルエンザ薬タミフルですが, それがどの程度の効果をもっているのか,それを検証するのは不可能という話題です.製造元のRoche社が,タミフルに関する特定の資料の公開を拒否しているというのです.そのため,研究者達は,各国政府に対し,同社に情報を公開するよう介入を求めています.

発端は,Internetseite des British Medical Journals (BMJ)の記事でした.それによると,Roche社は,国際的な研究機関であるCochrane Collaborationからのタミフルに関する未公開の資料を公開するようにとの要求を拒否し続けているとのことです.同機関は,例えば,タミフルがどのように肺炎の発症を防ぐのか,明確な科学的な説明がなされていないといいます.そして,これまでに公開されている資料による限り,同薬は,製造元によって謳われているほどの効果はなく,また,挙げられているものより多くの副作用が発症しうるともいっています.("Cochrane Database of Systematic Reviews"参照.)

ICEの先祖 - "Flugbahn-Wagen"

1931年6月21日,ハンブルグ - ベルリン間において,鉄道車両による速度記録が塗り替えられました.全長257 kmの同区間上で記録された速度は,230.2 km/h.使用されたのは,《鉄路のツェッペリン》,あるいは,《鉄路の魚雷》などと称された"Flugbahn-Wagen".(オンラインアルバムは,こちら.) 推進力をプロベラの回転によって生み出すという風変わりの設計の車両でしたが,その後,営業運転に使用されることなく,廃車となりました.理由は,走行時の騒音が大きすぎる,機関車として他の車両を牽引することができない,一度に輸送できるのが,わずか24名のみ等々.

時は流れて,23年後の2004年,ハンブルグ - ベルリン間は,ICEによりわずか8分で結ばれるようになりました.

Alexandre Yersin, ペスト菌の発見者

11月15日付電子版"L'EXPRESS"の記事"Qui était Alexandre Yersin, le héros de Peste & Choléra?"より.

スイス生まれの細菌学者にして探検家Alexandre Yersin*1)の波乱に満ちた生涯を描いた,Patrick Deville著"Peste & Cholera"は,2012年のFemina賞を受賞しました.ベトナムでは,ヒーローとして尊敬され続けるYersinの足跡を解説したビデオ.(フランス語のみ)


*1) 日本語では,アレキサンドル・イェルシンと表記されるのでしょうか.

Thursday 15 November 2012

アメリカの「財政の崖」をフランス語で言うと

"Mur budgétaire"というのだそうです.ということは,崖というより壁ですね.仏検定1級へ挑まれる皆様,ご留意を.(昨日付電子版"Le Monde"の記事”"Mur budgétaire", Syrie, Petraeus... première conférence de presse pour Obama”より)

Tuesday 13 November 2012

地中海沿岸各国の記録映像のデータベース

11月13日付アルジェリアのフランス語日刊紙El Watanのニュースレターの記事"Mémoire audiovisuelle : des archives algériennes en ligne"が伝えていますが,これ迄に制作された地中海世界各地のドキュメンタリー映像のデータベースが公開されました.URLは,http://www.medmem.euです.もちろん,英語のインターフェイスも提供されていて,とても便利です.もっとも映像の中で流れる言語は,ギリシャ語あり,クロアチア語あり,アラブ語あり,フランス語ありと,私たち日本人にはなじみのないものが多いのでどの程度まで利用できるかわかりませんが,少なくとも,現地の映像は,旅行の計画を練るためなどには参考になりそうです.フランス,イタリア,スペインの映像も豊富です.

おすすめの使い方として,まず,ホームページの右に表示されるINTERACTIVE MAPを選んでから,映像を探したい場所を選びます.そして,表示されるメニューから視たいと思う作品を選ぶとよさそうです.ほかに,タイムラインで探す方法(FRESCO),また,リストから探す方法(LIST)も用意されています.

シャンパーニュ街道のクリスマス

この冬,シャンパーニュ地方のご旅行を計画されている方へ.以下のサイトがご参考になるかも知れません.

    アメリカ,世界第一位のエネルギー資源輸出国へ

    スイス放送(DRS)と独SPIEGELのサイトが,それぞれ11月12日付のUSA bald grösster EnergieproduzenUSA werden Ölmacht Nummer einsという記事のなかで,先日,IEA(International Energy Agency)によって発表された報告書に書かれている今後の世界のエネルギー事情予測を紹介しています.

    以下,その中から,いくつかのポイントを抜き出してみました.

    まず,二つの記事の同じようなキャプションをまとめてみると,アメリカは,比較的近い将来,悲願の外国へのエネルギー依存からの脱却が達成可能.2017年には,ロシアや中東諸国を抜いて,世界第一位の原油産出国になり,2035年以降は,純粋にエネルギー資源の輸出国になるそうです.

    以下,記事本文から(両方とも同じような内容です.)

    天然ガスについては,アメリカは,2015年までに世界最大の産出国になり,2020年には,輸出量が国内消費量を上回るようになります. 現在,アメリカは,国内で消費される化石エネルギーの20%を輸入していますが,そうした状況の根本的な転換が起こるというのです.

    こうした変化が起こる理由は,これまで採掘が困難とされていた"tight oil"と呼ばれる,固い岩盤内に埋蔵されている原油が,採掘技術の進歩によって採掘可能となり,同様に,環境保護の視点から,その安全性について賛否が分かれているシェールガスの採掘も技術的に可能となっていることです.そして,これに平行して,自動車などに消費されるエネルギーの量も減少するという事情もあります.その結果,中東産の原油は,その90%がアジア諸国に輸出されるようになります.

    IEAの報告書は,また,将来におけるエネルギー消費の減少についても述べています.それによると,2035年までに,世界のエネルギー需要において,2010年当時の需要の1/5程度の削減が可能となりますが,やはり,2035年までに,世界のエネルギー需要は,1/3程増加するといいます.後者の理由としては,中国,インド,また,中東諸国の経済発展が挙げられています.そして,ドイツ,スイス,日本などの原子力発電からの脱却により,気温の上昇量を2度以内に抑えるという目標の達成は困難になるとみています.

    また,ヨーロッパや日本における電力料金の高騰にも言及がされていて,2035年における電力料金は,それぞれ課税前の価格ですが,日本においては,1キロワット当たり24 USセント,ヨーロッパでは,同じく19 USセント,なお,中国では,同じく7 USセント,アメリカでは,同じく14 USセントと予想されています.

    最後に,今後の世界の原油供給状況については,世界的な経済活動の沈滞の影響により,今後5年の間に,世界の原油供給は安定するとし,原油の輸入価格も,1バーレル当たり89ドル程度になるだろうとしています.

    以上が,記事の要約ですが, やはり,11月12日付電子版SPIEGELの別の記事Deutsche Firmen ziehen sich aus Desertec zurückによると,先日,ご紹介した,北アフリカにおける太陽熱発電所の建設を進めるDesertecから,ドイツのSiemens社やBosch社が撤退を決めたようです.ヨーロッパのエネルギー政策も,今後気になるところです.

    なお,今後の世界のエネルギー・バランスの見通しを示したグラフがSPIEGELのFOTOSTRECKEにおいて公開されています.ドイツ語ですが,ご参考迄に.

    Monday 12 November 2012

    アップル,スイス国鉄に1600万ユーロの賠償金支払いへ

    11月11日付電子版SPIEGEL誌の記事Apple zahlt Millionen für Bahnhofsuhr-Designによると,アップルは,無断でスイス連邦鉄道の時計のデザインをiPadに使用したとのことで,後者に2000万スイスフラン,およそ1600万ユーロの賠償金を支払うことになりました.(個人的には,アップルのコンピュータも,スイス国鉄の時計を真似たデザインの腕時計も使っているもので,少々複雑な気分です.)

    スイスの駅で見かける時計は,1944年,デザイナーのHans Hilfikerによって考案されたもので,そのデザインは,ニューヨークのMuseum of Modern Art やロンドンのDesign Museumでも展示されています.

    さらに詳しい情報は,スイス,チューリヒの日刊紙Tages Anzeigerの11月10日付Der Streit mit Apple schwemmt Millionen in die SBB-Kasseをご参照ください.

    なお,スイス連邦鉄道の時計のスクリーンセーバーの合法的ダウンロードはこちらから.同鉄道のそのほかの壁紙はこちらから.

    Sunday 11 November 2012

    ARTE+7おすすめ番組 "安らかに眠ってください”

    ドイツ語版を視聴する場合は,再生後,画面右下のリストから"Deutsch"を選んでください.視聴可能期間内に"Erreur"が表示された場合は,ブラウザの更新ボタンを押してください.なお,この番組は,青少年保護のため,現地時間の23:00から05:00の間のみ視聴可能で.また,18歳未満による視聴は推奨されておりません.    

    世界中の送り人たち大集合.以下の世界各地を取材し,葬儀に先立って遺体に施される処置の方法を記録したドキュメンタリー.
    • Harlem/ニューヨーク/米国
    • Bukarest/ルーマニア
    • Lyr/スウェーデン
    • Hamburg/ドイツ
    • Pashupatinat/ネパール
    • Phoenix/アリゾナ/米国
    • Wien/オーストリア
    • Oaxaca/メキシコ
    Repose en paix(フランス語版
    Ruhe sanft(ドイツ語版)
       
    (フランス,オーストリア,2008年,88分)
    ARTE/オーストリア放送制作  
       
    無料視聴可能期間:2012年11月11日01:16から1週間 

    Saturday 10 November 2012

    ARTE+7おすすめ番組 "深海の楽園"

    ドイツ語版を視聴する場合は,再生後,右下のリストから"Deutsch"を選択してください.視聴可能期間内に"Erreur"が表示された場合は,ブラウザの更新ボタンを押してください.
    冷たく,暗い深海底に育つLopheliaという珊瑚とそこに生息する生物たちの記録.撮影は,北大西洋に望むノルウェーのRost-Riff,同じくトロントハイムフィヨルドのTautra-Riff,アメリカのフロリダ,そして地中海で行われました.

    Paradis en eaux froides(フランス語版)
    Unbekannte Paradiese(ドイツ語版)

    (ドイツ,2012年,43分)
    西ドイツ放送制作 無料視聴期間:2012年11月9日19:30より1週間

    タリバンに銃撃されたマララさん,快方へ

    10月9日,乗車中のスクールバスがタリバンに止められ,彼らからの銃撃で肩と頭に重傷を負い,一時は危険な状態にあったマララさん(Miss Malala Yousufzai,14歳)ですが,11月9日付の電子版ル・モンド紙によると,現在入院中のバーミンガムのクイーンエリザベス病院において徐々に快方に向かっているとのことです.彼女の暗殺を計画したタリバンは,その理由として,マララさんが女性が教育を受ける権利を主張しているからと言っています.彼女のもとには,世界中から多くの励ましが届いています.

    以下,マララさんの遭難とその後を伝えるル・モンド紙の記事へのリンクです.

    1. Malala, militante de 14 ans, "dans un état critique" après une attaque des talibans(10月9日)
    2. La jeune Pakistanaise blessée par les talibans transférée en Grande-Bretagne(10月15日)
    3. Malala, la jeune opposante aux talibans, "reconnaissante" pour le soutien du monde(11月9日)
    現在のマララさんの状況は,こちらです. 

    リンクがある10月9日付の記事のページから,2009年に制作された彼女の家族のドキュメンタリービデオ(英語)が視聴可能です.その中で,彼女は,自分の国に尽くすため,以前は医者だった希望の職業を政治家に変えたと語っています.実際,このビデオの中でパキスタンにおけるアメリカ代表女性教育の現状を訴え,改善のための協力を求める彼女の様子が流れますが,実に堂々としています.

    その他,11月9日,オーストリアのウェブニュースサイトのnews.atが,"Unterstützer fordern Nobelpreis"という記事を掲載し,彼女の支持者たちは,彼女へのノーベル平和賞の授与を望む人々の署名の数が,現在80000に達したことを伝えています.すでに,彼女は,去年,パキスタンの国民平和賞の最初の受賞者となり,また,オランダのKids Rightsの国際子供平和賞の候補者のリストにもその名を連ねています.

    BBC Newsのサイトに掲載されたマララさん関連の写真

    l'EXPRESSビデオより - "キャンパスから視たアメリカ大統領選","アメリカの死刑制度を描いたドキュメンタリー Honk"

    11月10日付フランスL'EXPRESS誌のニュースレターLEXPRESS.fr Vidéoに掲載されていた映像の中から2本紹介します.

    1本目は,Campus Campaign, le webdoc des élections américaines
    アメリカ10の大学における大統領選挙戦を記録したビデオです.

    2本目は,VIDEO. Etats-Unis: "Un condamné à la peine de mort est considéré comme un sous-homme"
    フランスの社会学者であり,アメリカにおける死刑制度についてのドキュメンタリー映画"Honk"の制作者であるArnaud Gaillardさんの自身の作品に関してのコメントです.


    Honkというのは,自動車の警笛のことだと思いますが,この言葉は,死刑廃止を訴える人々が,自分たちの主張のシンボルとして用いているようです.

    Gaillardさんによると,アメリカでは,死刑囚はもはや人間としての扱いをしてもらえないといいます.(日本ではどうなのでしょう.)彼らは,食事も十分に与えられず,病気になっても,重大な状態とならない限り満足に治療も受けさせてもらえません.どうせ,死ぬのだからというのがその理由です.アメリカにおいて,囚人が,人間扱いされないのは,グアンタナモ収容所だけかと思いましたが,死刑囚であるにせよ,少なくとも人間として扱われない状況は,アメリカ本土においても存在しているのです.(日本の場合は,逮捕された時点で,人間扱いされないようですが.)映画は,死刑制度が存続しているアメリカ各地の取材を通して,死刑は,社会から"怪物"や"ごみ"を除く方法というアメリカ人独特の死刑観を描いています.

    "Honk"は,2011年11月,フランスで劇場公開され,現在,DVD(英語版,フランス語字幕)が,Amazon.comやAmazon.frなどで購入可能です.(日本まで送ってもらう場合,Amazon.frのほうが安いようです.)

    Friday 9 November 2012

    フランス議会,3月19日をアルジェリアとの停戦記念日に決定

    アルジェリアのフランス語の日刊紙,El Watanの11月9日付電子版の記事"Le 19 mars, journée du souvenir en France"によると,前日の8日,フランス上院は,1962年のアルジェリアとの停戦が発効した3月19日を「アルジェリア戦争およびチュニジア,モロッコにおける戦闘の犠牲となった民間人並びに軍人を追悼する日」に制定したそうです.法案は,社会党により提出され,オランド大統領のアルジェリア訪問を数週間後に控え歴史を政治の道具にしていると右派からの反対を受けましたが,賛成181,反対155で可決されました.

    Thursday 8 November 2012

    An European point of view as to Japan


    Personally, as Japanese, I quite agree with this statement describing adequately the actual state of the government of this country. And I'm confident that it will continue to be always so, regardless how many prime ministers will appear and disappear one after another, which will never change Japan, a country and a nation remaining pre-modern in its mind and soul everlastingly.

    "Unerfahren auf dem diplomatischen Parkett, ignorant gegenüber seiner historischen Schuld und unfähig zu wirtschaftlichen Reformen - Tokio agiert oft hilflos. Erfolgreich ist hingegen eine Image-Kampagne der Regierung, die sich an die Jugendlichen der Welt richtet  - Mangas und Videospiele haben das Ansehen Japans verbessert."

    Barbara Bauer, Dietmar Bartz, et al, Atlas der Globalisierung, 2. Auflage, 2010, Le Monde diplomatique/Tageszeitung Verlags- und Vertriebs GmbH, Berlin, p122

    *1) Its translation in French would be: 
    "Inexpérimentés dans le domaine diplomatique, ignorante de sa dette historique et incapable de réforme économique - Tokyo agit souvent impuissant. Le succès, cependant, est une campagne d'image du gouvernement, qui vise à la jeunesse du monde - manga et jeux vidéo ont rehaussé la réputation du Japon." 

    And in English: 

    "Inexperienced in the diplomatic arena, ignorant of its historical debt and unable to economic reform - Tokyo often acts helpless. Success, however, is an image campaign of the government, which is aimed at the youth of the world - manga and video games have improved the reputation of Japan."